HEADLINERの第三弾はアメリカで活躍する2人のフォトグラファー。泣く子も黙るTHRATHERのメインフォトグラファーのジョー・ブルックとニューヨークとヨセミテに足を深く踏み入れていく渋谷ゆりの二本立て。ぜひ! 心の中にずっとあって歯を食いしばらせてくれる詩、宮沢賢治の『春と修羅』に収録されている告別。死生観に多大な影響を与えている優しくも苦しい小説、遠藤周作の『沈黙』。あるときから飛行機が非常に苦手になった僕を飛行機に乗せて旅を続けさせてくれるエッセイ、星野道夫の『旅をする木』。それらはすべて文庫本になっていて、500円前後で手に入れることができる。僕の人生の指針になるような、友だちのような、そんな本がワンコインで買うことができる。安いようで良い意味で高くつく、ということはこういうことだ。素敵な作家たちの作品を例えにして言うのも気が引けるけれど、Sbはスケートボードや写真が好きな人にとって、そういうものでありたいと思っていた。それくらいの気概でつくっている。もちろん、Sbが500円、ワンコインだったのにはいろいろな理由がある。その中でも、たまたま本屋に入ったスケーターを思い浮かべて考えた理由はこうだ。時間つぶしがてらなんとはなしに入った大型書店。そこで、たしか欲しかった本命のマガジンがそろそろ発売されている頃だったのを思い出し、棚をチェックしはじめる。しかし、なかなか見つからない。そのうちに、Sbに出くわして立ち読みしながらパラパラやってみたら、(意外に良いな)と思ったりしてしまう。デニムのポケットに手を突っ込んだら、ジャラ銭がある。手のひらに広げて数えてみた。594円あった。(ところで、Sbっていくらなの? 500円?! 買って読んでみよう、見てみよう)。そんな空想が価格設定につよく作用していたことを、知ってる人は少ない。果たして、その空想通りのことがどこかの街の書店で起きたのだろうか。レジでピッとバーコードを読む店員の無愛想ぶりをいぶかしながら、500数円を出したそのポケットに今度はSbを丸めて突っ込んでくれた人はいたのだろうか。たしかなことはわからない。だけど、この15年の間にはきっといたんだと思う。そして次のSbを楽しみに待つようになってくれた人がいたんだと思う。そんな人たちを裏切るつもりはこれっぽっちもないのだけれど、今号から値段が1000円(税抜)に変更になる。これにも理由がいろいろある。その中でも、一生涯、紙の本を持ち続け、待ち続け、めくり続ける人を思い浮かべて考えた理由はこうだ。良いと思ったもの、これが根幹なんだと思えるもの。自分自身にとってそういうものを見つけることができたり、選ぶことができる人は、なるべくならばずっと色褪せない、ヨレないものであって欲しいはず。紙だけれど、そこに収録されているスケートの素晴らしい写真や、スケーターの素朴で直球な話を、ずっと大切に持っていることができる。そう思いたくなる存在。そして、グラビアを撮ったフォトグラファーや被写体となったスケーター自身も、誇らしげにページを広げたり、愛でたりできるプリント(紙)でありたい。それを信じて、そうであるようにSbはポケットに丸めて突っ込むものから、あなたの本棚に積んでもらうものへと値段を変更した。具体的に少し説明しておくと、表紙の装丁を変え、特集グラビア部分の紙や印刷技法を凝ったものにしたりしている。といっても、相変わらず「スケートマガジンでしょ?」って言って、ポケットに丸めて突っ込んでくれる人がいてくれたら嬉しい。そして、端が折れて丸くクセのついたそれが、結局はその人の部屋まで辿り着いて、結局は本棚に積まれていったのなら、なお嬉しい。Sbは書店、プロショップにてご購入できます。書店は5月12日より。