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TANGENT

トワイライトからミッドナイトへ。完全なる真っ暗な世界にならない街の片隅でゴーゴーと音を滑らせる彼の目線。光の点は線のように糸を引いて背後に消える。カラダにまとわりついてくる都会の夜気がなんとなく居心地を悪くする。街で見かけたもの。通り過ぎていったもの。追い抜いていったもの。百聞は一見にしかずというが、プッシュは一瞬にしかず。通り過ぎていったものや追い抜いていったものは、その音で振り向いたり、逆にこちらが驚かされたり。板の上から一期一会、いとおかし。滑っていいとこと滑ってはいけないとこがある。それとは別で、滑りたい場所と滑りにくい場所がある。ダメとイイの押し問答と、したいとしたくないのジャンケンポンは、なかなか合点がいきにくい。正しいことを言う悪人を称賛し、間違ったことを言った善人をあざ笑う。そんな違和感をつきぬけろ、GO! AHEAD!WADAPPの写真の起点にはヨコイチで見た世界があるように思った。天地より、前後と左右に何かがあるはずの世界観。それはスケートボードの動きとよく合致していて、彼がプッシュし続けている板上の世界の中では、とても重要な視界になっているのだ。色はスピードに取り込まれてしまって、ウィールが哭いてプッシュしていく音のみに陶酔していく感覚。この心地よさを説明する言葉はもたないが写真はそれを焼きつけてくれる。君らは路傍の石となにがちがうっていうんだい。そんなふうに背広なおとなが思ってた頃とはだいぶ時は進んだ。しかし、いまだに路傍をプッシュし続ける仲間や覚えたての頃から親近感のカラーコーンは変わらない景色の中のまま。ビューティフル・モーメント。街を巡る目にした四季の折々は、いつしか感覚だけの残像になり、漠然とした美しさだけになる。それをたくさん知っているのがスケートボーダーだったりする。Sbホームページでフォトブックを目指して好評連載中のWADAPPフォトエッセイ、通称・WADA撮(わださつ)。今回、グループ展参加のためにWADAPPがその中からセレクトした展示写真(すべてオリジナルパネルになっています)を、SbのWEBストアで販売。しかも、彼のセレクトからさらにSbがタイトル分けして4枚一組のセットを7セット限定販売することになりました。部屋に飾るもよし、あえてブックスタンドの間に挟んでチラ見せするもよし。とくにプロショップの空間ディスプレイなどにはもってこいの美しい存在感があると思います。路上でウィールが哭く音が今にも聞こえてきそうな、わずか十数センチからの1枚の板と4つのタイヤの世界観。ぜひ所蔵していただけたらと。

Senichiro Ozawa