Sb Skateboard Journal TOP

TANGENT

追伸。2001年だった。WHEELマガジンなき後、新しく動き出した雑誌を何と名付けようかと考えた。通常、ネーミングには時間をかけるものかもしれないが、あっさりと決った。しかし、その"Sb"という名前に対して、当初、周囲からの反応は芳しいものではなかった。耳慣れない、どちらかというと少し野暮ったいワードとされた。これは、まだスケートボードをSBと略すことがなかった頃の話。簡単なワードなのにありそうでなかったもの。内容的なことも想像して、そういうのがよかった。さて。philharmonyは交響楽団として知られるが、今夏展開した"FILL"harmonyはスペルミスではないかという誤解を当初は招いていたかもしれない。しかし、Webからギャラリーへと壁を埋めかき鳴らした個性強い"FILL"なハーモニーのその音色(意味)を、今となってはご理解いただけたのではないかと思っている。来場してくださった方はとくに。遅ればせながら、目撃してくださった方々、ご協力いただいた方々にお礼を申し上げたいと思う。昨夏のWebだけの24時間限定の試みから、こうしてギャラリー展にまで飛び出したプロジェクト。会場で、じっくりと壁と正対して腕を組んだりのけぞったり凝視したり口元を緩めたりする人々の姿がこのプロジェクトのすべてを集約していた気がする。作品と対峙すること。ハーモニーなのに1on1、読んで、見て、また一周して。一切の音もなく、外に注がれる太陽光への逃げ場もない、本気なエリア。Sbにも寄稿してくれているフォトグラファーたちだけでなく、来る人来る人がみな単身で乗り込んでそのエリアに入り込んでくるさまは、そのままアーティストのスタイルに直結している気がした。誌面においても説明不足のSbが、懸けたひとつの表現手段。それは2012年、Journey、photogenicから続く今夏に必要な"FILL"harmonyだった。imaone、QP、SHOHEI、SUIKO、SYUNOVEN、TENGAone、6人のアーティストの描いたアートワークは圧巻だった。あっさりと決まったSbなんていうマガジンの名前を、いとも簡単にふっとばして(FILL)しまいかねないものだった。だからこそ面白かった。挑戦しがいがあった。簡単なことなどひとつもないが、それはスケートボードも同じ。そしてそのページをつくることも同じ。責任と集中力と緊張感。だからこそ楽しい実感。スケッチーなやりとりであったとしても、モノがモノを言う。0から1を生み出す人間は、その"1"なものを信じるしかない。そして、その"1"を10にも100にもできるのは、見てくれた方々や知ってくれた方々の力。Webの5日間とギャラリーの9日間、延べ14日間に及んだこのプロジェクトは、望みはそうであったが、望み以上にフィルハーモニーになった。もちろん、会場での歓談や乾杯の数もナイスコーヒーな話も楽しいハーモニー。とにかく盛夏が過ぎ去ろうとしている今、"FILL"harmonyというものが、philharmonyのスペル間違いではなく、テキトーに考えた造語でもなく、新しい、そして余韻を続けるワード(事象)となるのではないかと確信している。すべてを含んで、ありがとうございました。そして、また何かをやるときページ上や会場で、新しく出会う方々、よろしくお願いします。 追伸の追伸。期間中、毎日オープン前にキンキンにビールを冷やすための氷を届けてくれた老舗の氷屋のおじいちゃん。昔ながらの大きな氷の塊を受け渡すと必ず壁を見渡していた。それをあえて突っ込まずにいたのだけれど、最終日、最後の氷を置きゆっくり壁を見渡し、おじいちゃんがポソッと言った。「すごいキレイですね」。目が微笑んでいた。この夏の興奮は溶けはじめたばかり。2012年晩夏。

Senichiro Ozawa