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TANGENT

田舎の両親にデジタルフォトフレームを贈った。メールで写真を送れるやつだ。これで彼らの孫の写真を送ろうと思うのだが、通信費用は月額1000円だからプレゼントとして手軽な範囲だ。数日後、両親から礼の電話をもらった。そして、ひとつ注文が。
「よかったら本物の写真も送ってくれないか?」
本物の写真? 紙に印刷したやつってこと?
「そうそう」
なるほど。彼らはデジタル(というより変わりゆく映像)として見る写真は本物とは感じていないようだ。プリントこそ本物であると。まるでどこかの大先生の言葉のようだ。これは興味深い。僕の推測では、その本物の写真は居間のテーブルに、いつでも手軽に取り出せるように新聞やチラシとまとめて放置されることになるだろう。さて。本物の扱いとして、これは相応しいのか。本物なんだからもっと丁重に扱われるべきではないのか。むしろフォトフレームの方が高級感があっていいのでは? そう思う一方で、紙にプリントされた写真こそ本物という捉え方は、感覚的に実にしっくりくる。間違いない! 本物という概念にも人それぞれあって、その人の主観で見やすかったり手軽であったり、懐かしかったり、重みや厚みをを感じたり、匂いも重要な要素かもしれない。とにかくそういうぐっとくる状態の写真だったら、僕らは本物と呼ぶに違いない。少なくともそういう色々な感じ方があるということを20年後も30年後も、僕は忘れたくない。

Nobuo Iseki